ホーム » Sid Meier's Game » Sid Meier's Pirates!情報, Pirates!公式サイトから »

Pirates!開発者日記:嵐のプロデューサー

公開:2004年09月30日  最終更新:2005年11月22日

GameSpotに、Sid Meier's Pirates!の開発者日記の第4回が掲載。Firaxisの準プロデューサーであるDan Magahaが、Pirates!のようなタイプのゲームを製作するうえでの挑戦の数々や、Firaxis のゲームデザインの秘密について語っています。

訳注:訳文には原文にない段落分けを適宜追加しています。

騒乱は嵐のごとく

ここFiraxisで、我々は世界中でもっとも人を引きつける、楽しいゲームをつくることに打ちこんでいる。これは大それた望みではあるが、我々にはSidという名前で知られる、そんなに秘密でもない秘密兵器がある。そしてまた、我々はある開発プロセス──反復プロトタイピング (iterative prototyping)──を自家薬籠のものにしている。我々の力を仲間そして会社としてひとつにまとめ、時の試練に打ち勝つことのできる偉大なゲームをつくるという我々の目標に専念しつづけることを助けてくれる方法だ。

この日記のなかで、反復プロトタイピングの様相の一部と、我々の一般的な制作プロセスについて話してみようと思う。

古き良き日々にゲームがどのようにつくられていたかを語る決まり文句を聞いたことがあるだろう。一人か二人の人物が、「自宅のガレージから」ベストセラーゲームを産みだした、というやつだ。ところが今日では、プロセスはもっと入り組んだややこしいものになっている。数ダースの人間が共同作業し、数千行のコードが入力され、膨大な数の3Dモデルが構築され、何時間にもおよぶ量のサウンドが録音される。このカオスの中心にいるのがプロデューサーだ。

Sid Meier's Pirates!にはふたりのプロデューサーがいる。ひとりはBarry Caudill, PC版の指揮をしている。もうひとりが僕で、僕は主としてXbox版を担当している。この才能、アイディア、そしてエネルギーからなる竜巻に手綱をつけてゴールラインを越えるまで操縦し、もっとも楽しく、可能なかぎり高いクオリティを持つ製品へ昇華させるのが僕らの仕事だ。

読者の心を奪う小説を書く完璧な公式がないように、名画を描きあげる秘密のテクニックがないように、楽しいと保証ができるゲームを制作するための決まったやりかたなど存在しない。(もしやりかたを知っているなら教えてほしい。会社にあるピンポン台と交換しよう)

しかし、だいたいのゲームデベロッパはまずデザイン文書からはじめる。デザイン文書とは、そのまま言葉どおりの存在で、そのゲームのデザイン上の重要課題を説明したリファレンスのことだ。これにはバックストーリーやプロットから、マップの図表、すべてのオブジェクトとそのオブジェクトの配置地点の一覧表など、ありとあらゆるものが詰めこまれている。デザイナーがそれを書き、全員がそれをゲーム構築の青写真として使って、そこに説明された通りのものをつくりあげる──、それがデザイン文書の理想だ。

このやりかたが導くのは、開発プロセスにそって発生する、数多くの予期せぬ興味深い問題だ。たとえば、ゲームはデザイン文書の仕様そのままに完成したが、ただそのゲームが楽しくなかったとしたら? または、デザイン上の必要性に端を発する予期せぬ技術上の問題で、ゲームが許容できないほど低いフレームレートでしか走らなくなってしまったら? リストはどこまででも長くなる。

ここFiraxisでは、我々は違ったプロセスを採用している。この、「楽しさを見つける」のを非常に効率的に支援することを我々が経験的に学び取ったやりかたこそ──反復プロトタイピングだ。

これは言葉の印象よりもずっと単純なやりかただ。反復という部分は、ゲームを改良し、一歩下がって出来上がったものを評価し、それを土台にして次の段階の構築をおこなう、というふうに、我々の作業が循環型であるところから来ている。プロトタイピングという部分は、我々が単純なモデル化とシミュレーションからはじめて、間違いなく良いものをこしらえ終わったところでひとつにつなぎあわせるのが由来だ。

楽しさをキープする

ほとんどの人々が、Sid Meierがそのキャリアのなかで驚くべきゲームをいくつかつくってきたことを知っている。多くの人が知らないのは、彼がどれだけ素早く、動作して、プレイ可能で、楽しいプロトタイプを組み上げるかだ。たとえばSimGolfのプロトタイプは、わずか二週間で完成した。

今でも思い出すのは、我々が恐竜ゲームの制作を続けていたある月曜日のことだ。出社すると、Sidがみんなを共有スペースに呼び集めて、ゴルフゲームをつくろうと思っているとアナウンスした。それから彼は、ちいさなゴルファーやハザードやサウンドエフェクトのついた、完全に動作するプロトタイプを起動させた。これには全員が完璧に打ちのめさてしまった。

Pirates!も、それと非常に似た道筋でかたちになっていった。Sidがプロジェクトに取りかかったほぼ一週間後には、この会社にいる全員が机にかじりついて、彼がつくったあたらしい3D海戦のプロトタイプをプレイしていた。小型の素早い船で砲弾をよけようとするのがどれだけ楽しいか、軍用ガリオン船で高らかに大砲の一斉射撃をするのがどれくらい心満ちる体験かを熱心に語り合いながらだ。

我々が最初のスイングで場外ホームランをかっ飛ばしたと言うつもりはない。それどころか、反復プロトタイピングの最も重要な面は、連続的なフィードバックを繰り返すところにある。Sidはひっきりなしにあたらしいアイディアを取りいれたバージョンをつくっては公開し、疑うことを知らないモルモットたち(僕らのことだ)を、ゲームプレイを洗練し、楽しさをあたえる要素を増加させるための果てなき探索行に駆り立てたものだ。実際、このプロセスはプロジェクトの大部分を徹して継続される。真実、ゲームが完成するまで、決して終わることはないのだ。

もちろん、このやりかたにも落とし穴がある。どんなやりかたにも落とし穴はある。しかしこの場合、それは良いことなのだ。フィードバックのプロセスで、これは面白くなるぞと考えていたことが実際にはそうなっていないと気づくことがある。それもしばしば。または、なにかを成し遂げるためのもっと良いやりかたを見つけ出すこともある。はたまた、その人の気に入った機能をゲームに入れてほしいからと、誰かが我々を買収するために現金または高級なチョコレートを贈ってくることも……。まあ、最後のは実際には起こったためしはないし、起こっていたとしても誰にも証明できないけどね。

いずれにしても、我々はときたま一歩うしろに下がっては、ゲームのある部分に対するアプローチを考え直す必要がある。そして、いくらその行ないが素敵でいなせなMicrosoft Projectのファイルをめちゃくちゃに破壊したり、ときには我々の正気を脅かすことがあるにしても、我々はよろこんで踏み止まり、流れに身をまかせる。

この良い例がPirates!の陸戦部分だ。ゲームのこの部分に対する最初の反復では、Sid Meier's Gettysburg!に似た仕組みが採用されていた。リアルタイムで、側面攻撃やルートの設定やその他おなじみの要素が入ったシステムだ。ところが、すばらしいアプローチに見えたにもかかわらず、実際プレイしてみると、これは正しいものに感じられなかった。そこでSidは最初からやり直して、こんどはターンベースのモデルを持って戻ってきた。これはゲームにぴったりはまって、しかも最初の反復の優れた要素はそのまま残されていた。

もちろんこれは、陸戦の構成要素のいくつかを再プログラミングしなければならないこと、アートとコードの両方面で、望んでも計画してもいなかった難題に挑まなくてはならないことを意味する。しかしここにこそ、優れたコミュニケーション能力──良いプロデューサーに必要なもうひとつのスキルだ──が成功するプロジェクトに不可欠な理由がある。

楽しさの追求──その目的はつねに手段を正当化する。チームはいっそう努力し、Sidがあたらしいビジョンを達成するために必要なすべてを手に入れられるように取り計らった。そのおかげでゲームがより良いものになったことには疑いがない。そしてゲームがより良いものになったことで、すべての努力は酬われるのだ。

ここまで読んで、もしFiraxisには退屈な時間など一瞬も存在しないように思えたとしたら、それは実際にそんなものが存在しないからだ。Firaxisのプロデューサーであるということは、つねに身構えて次の挑戦に対する準備を整え、才気あふれるチームメンバーを友好的で活力ある状態に保つためにつねに働きかけなくてはならないということを意味する。

我々はプロジェクト全体をデザイン文書にまとめるという贅沢はしていないけれども、あたらしいアプローチを試し、独創的なアイディアを実験する柔軟さを楽しんでいる。それらのアプローチやアイディアは、より良いクオリティとより多くの楽しさというかたちで帰ってくる。より良いクオリティとより多くの楽しさ──。そう。つまるところ、それこそが我々の携わるすべてなのだ。

ジャンル: Sid Meier's Game シリーズ: Sid Meier's Pirates!情報, Pirates!公式サイトから [ Permalink ][ View Comments ]
blog comments powered by Disqus